子供の頃、レストランで子供用の小さな高い椅子に座るのが好きだった。椅子と体のサイズがしっかりと合うのが気持ちよかったし、視線が高くなって楽しかった。
初めて行ったパーラーでトイレに行く途中、子供用の椅子を見かけてそれを思い出した。

まだやってこなかったことは色々あって、今はそれをどんどん解禁しているという気がする。特に「絶対やらない」と禁止してきたわけではないけれど、「自分はそういうのが好きじゃないのだろうな」と思い込んでいたことでも、やってみたらうれしかったり、おもしろかったりすることはまだある。今年は結局、それがいちばんの発見だったのかもしれない。
2023/10/16(月) 記事URL
BGMのない、赤ん坊が寝転んでいる動画を見ている時、思っていたよりすぐに居心地が悪くなった。それは長尺の作品の一部でなんの設定もストーリーもない動画だったから、余計に居た堪れなくなった。
それをパソコン画面に映して、座って見ている彼の後ろ姿が、より私を居心地悪くさせたが、彼にもまたなんの他意も意図もなく、ただその作品を見ていただけだった。

私は自分が子供を持たなかったことに罪悪感があるのかと考えたがそうではない気がする。たぶん、自分の意思で子供を持たないと決めてそうしたのだという気が未だにしていないのだろう。その都度考えてはいたが、結果的にそうなってしまっただけ。そこには何かを諦めたという気持ちが含まれているからもやもやするのだ。
それに、私はたぶんもう子供を持てないが、彼はどうしても欲しいと思えば方法がある。それが羨ましいのかもしれない。

『君たちはどう生きるか』に「悪意」の話が出てきたが、悪意のない石を積めば穏やかな世界を作れるという大叔父も、自らの頭に傷をつけた自分にもまた悪意があるという主人公にも、私は少し憎しみを抱いていた。彼らの悪意がその程度であることに驚きすらあった。一方、病院の火事で亡くなった母や、その代わりに後妻となった叔母の悪意はどこへ行くのだろう。

だから赤ん坊が見たくないという話ではない。私一人の悪意であんな世界いつでも壊せるという話だ。
2023/08/17(木) 記事URL
自分がこんなに生活そのものを大事にするようになるとは思わなかった。
年齢を重ねて、若い時はおろそかにしていたことが直接心や体調に影響するようになったからということもあるけれど、たぶん、私は生活自体をある程度ちゃんとしようとしている方が幸せなのだ。

物作りだけをできないことにもどかしさも感じるし、限られた中で私が作るものには色々な限界があると思うけれど、自分がどうしたら幸せかということを先に考えてもいい、というか、自分が幸せになるのが優先だと思うようになったのだ。ここ数年かけて。それは時代による考え方の変化で、また変わっていくものかもしれない。でも、今は寝る間も惜しんで作り続けたり、食事をレトルトばかりで済ませたり、そういう時期ではないのだ。
2023/07/25(火) 記事URL
スライサーで右手の中指の先を削ってしまった。ボウルにはった水の中にスライスした玉ねぎを次々落としていた最中で、私の中指の爪数ミリとその下の皮膚少しが、ほとんど抵抗なくスッと切れてしまった。
独特の違和感があったからすぐに患部を見たが、血が溢れていてどういう状態かよくわからなかった。指先を怪我したことだけはわかったので、もしかして近くに肉片が落ちているかと思ったが見当たらなかった。(病院に行った後で再度ボウルの水の中やまな板周辺を見直したがなかった。)
水で洗い、キズパワーパッドを貼ったが、今後どうすればいいのかわからず、近所の病院に電話して状況を話し、すぐに診てもらうことができた。
大きく切れたわけではないので、縫ったり指を繋げ直すような処置はなく、ただ治るまでばい菌が入らないように気をつけることが大事だと教わり、抗生剤の入った軟膏をもらって帰った。その後、私は玉ねぎを入れるのを諦めたアンチョビ入りのポテトサラダを味付けし、焼肉用の牛肉を焼き、茄子を白だしで焼き浸しにしていた。冷蔵庫にはケーキもあった。
最近節目の日の近くに何かしがちだ。新しくピアスを開けたり(これは意図的だったが)数ミリのサイズのタトゥーについて調べたり。(実行には至っていない。)
もしかすると、ちょっとした楽しいことよりピアスの方が思い出になると思っているのかもしれない。

残念ながら、こういうことがあると自分の体が生きているのだと実感してワクワクしてしまう。斜めにスッと切れた傷口を見ると、人間もちゃんと生き物で、立体なんだと感じる。風邪っぽいときは、喉の痛みも鼻水もひたすら億劫なだけなのに、げんきんなことだ。しかし、しばらく不便が続く。これを言い訳に、きっとなんでも断ってしまえる。
2023/07/19(水) 記事URL
知らない街で朝マックを食べている時、自分が行方不明者になったような気がしてすごくホッとする。
少し薄めでたくさん入った熱いコーヒーと、塩からいソーセージエッグマフィンにハッシュポテト。もそもそ食べているとあっという間にお腹がいっぱいになる。
行方不明者は一人きりでしばらくコーヒーを啜ってぼんやりしてから、現実世界に戻る。
2023/03/26(日) 記事URL