ふと足元に視線を落とした時、その人のスニーカーは薄汚れて穴だらけで、穴からは素足がのぞいていた。
私は内心驚いたけど、もちろん、顔にも声にも出さなかった。なるべく。でも、その後、心の中がぐちゃぐちゃになった。

私はその人のスニーカーの様子から、質問に正確な答えを出すよりも、よく話を聞いてあげることが大事なお客様だと瞬時に判断した。これまでの経験から、年配の男性で、身なりの整っていない人の場合、そういうことが多かったから。もちろん、私の仕事はカウンセラーでもホステスでもないのだけれど、目的の違う話題にも、仕事の時間の中でならば付き合おうと決めている。でも、自分で決めているのに、私はこの人のさみしさを埋めるためにこうして笑顔で話を聞いているんだと思ったら、途端に虚しい気分になってくる。
それに、私はこの人を、話し相手を求めているタイプの人だと判断したけれど、相手を孤独だと決めつけて、こうして熱心に頷いて「あげて」いるなんて、なんて気味の悪いことだろう。でも、短い時間の中ではそういう判断を行っていくしかなく、実際、この判断は正しくて、脈絡のない疑問の話を一通りじっくりと聞き終えたら、その人は満足気に帰っていった。

私はその、数日前に見た穴だらけのスニーカーを忘れられない。
素足にあんな靴では寒い。



2020/11/23(月) 記事URL