中年女性が冒険の主役であることがこんなにおもしろく感じるなんて、とは思う。私の世代の女性はやはり、若さが失われたら価値がなくなると社会に教えられてきているから、本当はそうでないと頭では理解していても感覚が伴わないことも多い。だから、そういう価値観でないものを見るとそれだけで喜んでしまう。でも、それを差し引いてもすごく良い映画だった。

完成された美しい映画も好きだけれど、これはもう一種類の好きなタイプ。愛と破綻で出来上がっている映画だ。

あれだけ雑多で混沌とした世界観でありながら、主軸の物語はすごくシンプルで胸を打つ。
どのキャラクターも多面的で奥深く、良いところも悪いところもちゃんとある。

どんなにそりの合わない相手でも、違う世界線では寄り添っていたかもしれない。今はうまくいかない愛も別の世界線では絶対的に結び合っていたかもしれない。そういうことを想像できる力があれば「今」も変えられるはずだという信念が全編通して貫かれていた。
2023/03/05(日) 記事URL