出かける用事があると、ついでにと雑事の予定を詰め込んでしまう。その結果、歯医者には七分遅刻して、歯医者のあるビルのエスカレーターに乗る直前に歯医者から電話がかかってきた。

被せ物が取れてしまった歯にわずかに虫歯ができていたのでそれを削り取ってもらう。被せ物が小さくて、歯との間に隙ができてしまったことが虫歯の原因のようで、新しいのはもっと大きくすっぽりと覆うようなものがいいそうだ。
取れた被せ物がいつ頃作ったものだか聞かれたが思い出せなかった。十年は経っていないと思うけれど、というくらいは前だ。

私は歯医者で唯一、口を開けたままにしておくつっかえのような器具だけは使うのを断る。強制的に開けたままになるのが怖い。ずっと大きく開けておくと唇の端が切れるし、顎が痛くなる。まるで拷問みたいだと思う。
それなら自ら口を大きく開けたまま懸命に耐えるほうがいい。

削ったあとを埋めてもらって、次回、新しい被せ物を作る。
神経近くまで削り取ったため、次回までの間に痛くなったら、神経も処置をしなければならないらしい。でも、私は歯の痛みにすごく鈍いので、本当はひどい状態でも気づかないことがほとんどだからとても不安だ。
この場合十中八九痛くないから。

通っている歯医者では治療後、皆が「お疲れ様でした」と声をかけてくるので、三回に一回は私も「お疲れ様でした」と答えてしまうが、患者は「ありがとうございました」が正しい返事だと思う。
2022/08/05(金) 記事URL