そんなことを話せる友達がいるなんて、という話になるとドキッとする。だって、人生のほとんどは「そんなこと」の集積だ。だから、私は「そんなこと」をとても大事にしている。それなのに、大事でないと感じたものについてはなんでも平気で踏みつけてきている気がするから。
2023/01/26(木) 記事URL
早めに家を出て、途中まで同じ電車に揺られる。向こうが先に降りて、その姿を遠目で見ながら、なんだか前の自分に戻ったような気持ちになる。
晴れて日差しの多い日で、駅から銀行まで、銀行から家までをのんびり歩くのが気持ちいい。それでも早めに着いたので、いつも散歩していた公園のベンチで時間を潰す。すると、スーパーの袋に紐をつけて凧のように飛ばしていた大勢の小さな子供達のうちの一人がどんぐりを持ってきて差し出す。
「くれるの?」と言ったら「うん」と頷く。彼女の顔は乾いた鼻水だらけだ。
「行ってくる」そう言って彼女はまた袋を高く飛ばしに走って行ってしまった。
私はそろそろ、現地で待ち合わせしている不動産屋さんが現れるだろうと公園を出る。
アパートの前に自転車を停めてスマホをいじっている若い女性がいる。傷んだ長い茶色の髪と黒黒としたつけまつ毛に不似合いなパンツスーツ。
目を合わせると不動産屋さんだとわかった。
部屋を仲介してくれたのはもっとベテラン風の中年男性だったが、からの部屋の中を二人きりで検分するのに気を遣って女性スタッフにしてくれたのだろう。
壁紙の一部の汚れが取れないと言われたが、敷金の中で収まる範囲だということだった。そもそも契約時にクリーニング代を敷金から出すことが条件に含まれていたから、本意ではないが、敷金がすっかり戻ってくるとは思っていない。
これで本当にこの部屋とは関わりがなくなる。少し悲しい気がした。
アパートを出ると坂を下って高田馬場に向かった。お昼にジャンクフードを食べる。
これから夕方までは私一人だ。
2023/01/07(土) 記事URL